2018'07.17 (Tue)
いつも何度でも(中編)(拍手2000リクエスト)
次の日、病室へ行くと珍しく女性の声が聞こえる。滋さんか桜子が来てくれたのだろうか。
いつも何度でも(中編)
「つくしちゃん!久し振りだね。海だよ海。覚えてる?」
海…?この声、まさか。高校の時の出来事が蘇る。
「海ちゃん、久し振り。また会えると思わなかった。看護師さんになっていたんだね。」
口の中がカラカラに乾いて、引き攣った笑顔を貼り付けた。
「少し話さない?」
もう癖になってしまった大きなお腹に手を当てる動作をする。ママに力を頂戴ね。高校の記憶が海ちゃんを拒否するが、いい大人な以上そうも言ってられない。カバンを椅子において、諾の返事をする。
「道明寺くん、また来るね。」
海ちゃんに話しかけられる司を直視することが出来ず、足早に病室を出て病室の前で海ちゃんを待った。結婚してるんだから、ママになるんだからしっかりしないといけないのに。
「つくしちゃん、道明寺くんとまだ付き合ってるの?」
あたしのお腹が大きいから気づいたと思ったんだけど。苦笑いしながら返事をする。
「結婚してるの。それで、お腹に子供もいる。」
「そっか。そんな忙しい時に道明寺くん記憶喪失だなんて大変だね。」
海ちゃんの言葉が心配そうに聞こえないのはあたしの心が荒んでいるからだと思う。心配げに眉尻を下げる海ちゃんを見て益々自分に対して落ち込んだ。
「つくしちゃん大変だろうし、道明寺くんのお世話海に任せて!」
「へっ?」
「じゃあ、仕事があるから行くね。また今度!」
海ちゃんの言葉に言葉を失っているうちに去って行ってしまった。
「うーん。任せたくないんだけど。」
蘇ってきた醜い心とあたしが携われないことに看護師として携われる嫉妬とが入り混じってドス黒い何かが出来上がる。自分でもよく分からない気持ちを持て余していた。
「遅かったな。」
気持ちを落ち着けるのに廊下で休憩してから病室に入った為、時間がだいぶ経過していた。昨日より冷たさの減った声色に気持ちが上向きになる。あたしはなんて単純なんだろう。
「おい、顔色が悪いぞ。大丈夫か?」
「大丈夫よ。司こそ大丈夫?」
顔を覗き込むと赤い。少し前、怪我の影響で熱が出ることがあったから、またそれかもしれないと思い、額に手を当てるも幸い熱はないようだ。
「熱はねぇよ。」
手を払われてしまい、いつもの調子でしてしまったが、本来司は人から触れられることを好まないことを思い出す。
少ししょげていると、空になったタッパーを手渡される。
「うまかった。」
という一言と共に。
受け取ったタッパーをバッグの中へ突っ込み、立ち上がる。夕方からパーティーがあり、その準備がある為だ。
「じゃあ、帰るね。」
「もう帰るのか?」
ベッドに座ってあたしを見つめる様子が、大男の癖に留守番する犬のように寂しげに見えクスクス笑った。
「夕方からパーティーなの。」
「あ?その腹でか?」
あたしの言葉を聞いて立てる青筋まで、記憶を失う前を彷彿とさせ愛しくなる。
「誰かさんが事故にあったから、あたしだけでも顔出さなくちゃならないのよ。それに、まだ生まれるまで少しあるから大丈夫。」
私がそう言うと何とも言えない顔をして、唇を不機嫌に歪めた司を置いて、ひらひらと手を振った。
今日は一ついいこと。
司に拒否されなかった。

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いつも何度でも(中編)
「つくしちゃん!久し振りだね。海だよ海。覚えてる?」
海…?この声、まさか。高校の時の出来事が蘇る。
「海ちゃん、久し振り。また会えると思わなかった。看護師さんになっていたんだね。」
口の中がカラカラに乾いて、引き攣った笑顔を貼り付けた。
「少し話さない?」
もう癖になってしまった大きなお腹に手を当てる動作をする。ママに力を頂戴ね。高校の記憶が海ちゃんを拒否するが、いい大人な以上そうも言ってられない。カバンを椅子において、諾の返事をする。
「道明寺くん、また来るね。」
海ちゃんに話しかけられる司を直視することが出来ず、足早に病室を出て病室の前で海ちゃんを待った。結婚してるんだから、ママになるんだからしっかりしないといけないのに。
「つくしちゃん、道明寺くんとまだ付き合ってるの?」
あたしのお腹が大きいから気づいたと思ったんだけど。苦笑いしながら返事をする。
「結婚してるの。それで、お腹に子供もいる。」
「そっか。そんな忙しい時に道明寺くん記憶喪失だなんて大変だね。」
海ちゃんの言葉が心配そうに聞こえないのはあたしの心が荒んでいるからだと思う。心配げに眉尻を下げる海ちゃんを見て益々自分に対して落ち込んだ。
「つくしちゃん大変だろうし、道明寺くんのお世話海に任せて!」
「へっ?」
「じゃあ、仕事があるから行くね。また今度!」
海ちゃんの言葉に言葉を失っているうちに去って行ってしまった。
「うーん。任せたくないんだけど。」
蘇ってきた醜い心とあたしが携われないことに看護師として携われる嫉妬とが入り混じってドス黒い何かが出来上がる。自分でもよく分からない気持ちを持て余していた。
「遅かったな。」
気持ちを落ち着けるのに廊下で休憩してから病室に入った為、時間がだいぶ経過していた。昨日より冷たさの減った声色に気持ちが上向きになる。あたしはなんて単純なんだろう。
「おい、顔色が悪いぞ。大丈夫か?」
「大丈夫よ。司こそ大丈夫?」
顔を覗き込むと赤い。少し前、怪我の影響で熱が出ることがあったから、またそれかもしれないと思い、額に手を当てるも幸い熱はないようだ。
「熱はねぇよ。」
手を払われてしまい、いつもの調子でしてしまったが、本来司は人から触れられることを好まないことを思い出す。
少ししょげていると、空になったタッパーを手渡される。
「うまかった。」
という一言と共に。
受け取ったタッパーをバッグの中へ突っ込み、立ち上がる。夕方からパーティーがあり、その準備がある為だ。
「じゃあ、帰るね。」
「もう帰るのか?」
ベッドに座ってあたしを見つめる様子が、大男の癖に留守番する犬のように寂しげに見えクスクス笑った。
「夕方からパーティーなの。」
「あ?その腹でか?」
あたしの言葉を聞いて立てる青筋まで、記憶を失う前を彷彿とさせ愛しくなる。
「誰かさんが事故にあったから、あたしだけでも顔出さなくちゃならないのよ。それに、まだ生まれるまで少しあるから大丈夫。」
私がそう言うと何とも言えない顔をして、唇を不機嫌に歪めた司を置いて、ひらひらと手を振った。
今日は一ついいこと。
司に拒否されなかった。
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